一枚板の実現したい野望!
地方のオーナーファミリーが望む事業関連のアドバイスは、大手金融機関の投資銀行部門が対応するような規模の大きい案件ばかりではない。
プライベートバンカー同士の顧客を紹介し合うなど、小規模の案件に速いスピードで対応することが効果的だろう。
迎え撃つ地域金融機関は、地域内の取引先や親密な関係にある全国型の金融機関のネットワークを生かしたアドバイスが有効である。
また、そのためには、顧客のビジネスを深く理解していることが必須である。
次に、不動産資産に関するニーズについて、三大都市圏と地方圏を比較してみよう。
三大都市圏よりも地方圏の富裕層・超富裕層が多く求めているのは、「不動産を活用した事業の収益性の向上」「遊休土地や建物の有効活用」「保有不動産の整理・売却」の三つである。
地価の上昇が三大都市圏よりも遅れているため、地方圏では保有不動産の有効活用に、皆悩んでいることがわかる。
一方、三大都市圏の富裕層・超富裕層が多く求めているのは、「不動産にかかる税金対策」「国内の不動産の取得」「海外の不動産の取得や売却」である。
地方圏とは逆に、地価の上昇を受けて、税金対策やさらなる不動産投資に関心が移っている。
不動産資産の管理・運用に対するアドバイスが得意なプライベートバンカーは、次のように語っている。
形がえぐれてしまっているような土地の有効利用について「何かいい手はないかね」と聞かれる(信託銀行のPB)大地主よりもビルを2〜3棟持っている人のほうがいろいろ気にしている。
たとえば、いまは個人で不動産を所有しているが、不動産管理会社にすると税金はどうなるか、あるいは、もう1棟買おうと思っているので紹介してほしいといわれることがある(信託銀行のPB)借地人との関係で困っている方に対して、不動産を整理する話が出てきたときには、それを積極的にサポートして、不動産を金融資産に換えていく、財産の組み替えを提案している(信託銀行のPB)地方圏の富裕層・超富裕層にとっては、金融資産の管理・運用よりも、「事業や不動産資産をどうするか」という点に関心が高い。
金融機関は、事業や不動産へのアドバイスを通じて、地方のオーナーファミリーとの信頼関係を築き、さまざまな課題を引き出していくべきである。
その際に、地方のオーナーファミリー攻略のポイントは、富裕層・超富裕層の顧客に深く入り込める人材の育成と、事業関連や不動産関連のソリューションを提供する組織連携能力の強化の二つである。
地方圏の富裕層・超富裕層がメイン金融機関である地銀・第二地銀に必ずしも満足していないため、相続・事業承継などの世代交代のタイミングで取引する金融機関を替える可能性があることを示した。
まず、富裕層・超富裕層ファミリーが、どのような相続対策を行っているのか、また、相続のために親子の間でどのようなコミュニケーションをとっているかについて明らかにする。
そのうえで、富裕層・超富裕層ファミリーの世代交代に備えて、金融機関が何をすべきかを考察する。
なお、地方圏に限らず全国の富裕層・超富裕層ファミリーの世代交代を論じる。
そのために、富裕層・超富裕層ファミリーの子ども世代に対して、親世代(富裕層・超富裕層本人)と同じ内容のアンケート調査を行った。
親世代がおおむね四十代から八十代に分布しているのに対し、子ども世代は二十代から四十代であった。
富裕層・超富裕層の子ども世代に対する調査方法の詳細は、巻末の参考資料をご覧いただきたい。
相続対策というと、生前贈与や賃貸アパート経営などの相続税対策を思い浮かべるだろう。
しかし、本来は、税金対策をする前に相続の方針明つくりを行っておくべきである。
そこで、財産の状況が一覧できるよう整理、子どもに資産の状況を伝達、子どもと相続についての相談、財産の分配方法の決定、の四つのプロセスを相続対策の「上流工程」と定義し、土地の売却や信託の設定、遺言書の作成(公正証書・自筆証書)、生前贈与や住宅取得資金の援助、相続税のための資金手当て、相続税を軽減するための資産活用、の5つのプロセスを相続対策の「下流工程」と定義して、富裕層・超富裕層の相続対策の実態を整理した(この九つのプロセスは、必ずしも順番通りに実施しなければならないわけではないが、より上流工程のプロセスを早めに実施することが望ましいと考えられる)。
NRI調査によると、相続対策の上流工程の対策があまり実施されず、相続税対策などの下流工程が多く行われているという傾向が見られた。
上流工程の方針がないままに下流工程の対策だけ行われると、実際に相続する際に、遺産を分割しにくくなるなどのトラブルにつながりやすい。
なぜ、このようなことが起きるのだろうか。
不動産を保有する富裕層・超富裕層を例に考えてみよう。
不動産を保有する富裕層・超富裕層に対して、あるべき相続対策のプロセスを伝える担い手がないまま、周囲が安易な相続税対策をあおるという実態がある。
この点について、不動産を保有する富裕層・超富裕層ファミリーから相続対策の相談に乗ることが多い銀行のプライベートバンカーは、次のように話している。
ゼネコンやハウスメーカーが地主のところに行って、「空き地を有効活用しませんか」という。
地主にあまり知識がないと、業者の言いなりになってしまう(メガバンク・グループのPB)子ども世代のほうが、更地の上に建物を建てたりする対策をしたがる。
止めるほうが大変なぐらい。
相続後の資産負債バランスを見て、かつ、物件ごとにローンを組む場合でも誰が相続するかも考えながらアドバイスしなければならない(メガバンク・グループのPB)たとえば、あるお客様は、主な資産がビル1棟で、資産を子ども二人に均等に分けたいとずっと考えていた。
ところが、長男の嫁にごちゃごちゃいわれて、何年か前に、生前贈与で半分あげてしまっていた。
部分的に相続対策をしてしまうと、より複雑になってしまう。
また、自分の思いも整理しきれていないことが多い(信託銀行のPB)住宅メーカーや不動産会社のなかには、財産の整理や分配の方針についてのアドバイスをしないまま、賃貸アパートの建設や土地売買を促す業者もいる。
また、ファミリーのなかにも、子どもや長男の嫁などが安易な相続税対策をあおることがある。
金融機関がやるべきことは、まさに、この相続プロセスの「上流工程」に対するアドバイスである。
財産目録をつくっていなければ、その必要性を説くことからはじめるべきである。
また、財産の分配方法や子どもへの伝え方については、本人の気持ちが整理されるまで、じっくり相談に乗らなければならない。
そして、家族関係や資産状況が複雑ならば、それをていねいに解きほぐしていく必要がある。
このようなアドバイスを行ったうえで、不動産の処分、遺言書の作成、土地活用やそのための融資などの「下流工程」の相続対策が行われるべきである。
時間がかかるかもしれないが、相続プロセスの上流工程における適切なアドバイスは、富裕層・超富裕層からの絶大な信頼につながるだろう。
では、相続対策が進んでいるのはどんなファミリーなのだろうか。
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